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2012-09-25

MOVIE vol.6 「最終目的地」

-そして、人生はまた、動き出す―

南米ウルグアイ。広大な敷地に佇むさびれた邸宅を、一人のアメリカ人青年オマー・ラザギ(オマー・メトワリー)が訪れる。
住んでいたのは、亡き夫に複雑な想いを馳せる未亡人。くたびれた愛人とその娘。
自らの余生を思い、若き恋人を解放しようとする老人。献身的かつ現実的な恋人。
その誰もの人生が、邸宅にひっそりと留まり、互いに絡まり合い、漂うように流れていた。
オマーの来訪によって、彼らの生活に新しい風が吹き込まれ、それは次第にオマー自身をも巻き込みながら、それぞれの最終目的地へといざなっていく。

みどころは何といっても、名優アンソニー・ホプキンス(アダム)と、今や日本を代表する国際派俳優・真田広之(ピート)のパートナーシップの描写。
濡れ場や露骨なシーンこそないものの、互いを思いやる言動や第三者との他愛ない会話によって、25年の長きにわたる二人の歴史がさりげなく、それでいて確実に伝わってくる。
特に、アダムがピートを解放しようとする場面では、ピートに対する感謝と深い愛情が、一見して冷静なアダムの表情からにわかに見てとれる。
見つめ合い、触れ合う。本当に、切なくも美しいシーン。
二人が同性愛者であることも、町の中で当然のように受け入れられており、セクシュアルマイノリティーであることを度外視して、純粋に二人の絆が描かれている。

本作は、アメリカの現代作家ピーター・キャメロンの同名小説を原作とする文芸作品であるが、その根底には、誰もが向かうであろう人生の目的地という普遍的かつ身近なテーマが描かれている。
空や木々の色、空気のにおい、情景の変化を、心穏やかに、無意識に五感で感じることも多くなるこの季節。
美しい自然、心に染みる洗練された音楽を感じながら、切ない中にも暖かい希望を見出せる。
そんな芸術的な一作として、この秋、ぜひお勧めしたい映画です。

(ジョージ☆フサコ)

出演:アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャルロット・ゲンズブール、オマー・メトワリー、真田広之

監督:ジェームズ・アイヴォリー
脚本:ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
原作:ピーター・キャメロン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
音楽:ホルヘ・ドレクスレル

提供・配給:ツイン
配給協力・宣伝:太秦
協力:パラマウントジャパン

2009年/アメリカ映画/117分/35mm/カラー/1:1.85/日本語字幕:田中武人
原題「The City of Your Final Destination」

10月6日(土)よりシネマート新宿にてロードショー
他全国順次ロードショー

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