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2012-10-23

上木彩矢さん インタビュー 前編

世界の各演劇賞を総ナメにした世界的大人気ミュージカル『RENT』。
『RENT』は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、舞台を1990年代頃のニューヨーク・イーストヴィレッジに置き換え、セクシャル・マイノリティやドラッグ中毒、HIV感染など、さまざまな事情を抱えながらも、夢をあきらめず力強く生きていく若者たちを描いた作品です。

今回は、新演出で届けられる2012年『RENT』出演者から、バイセクシャルのパフォーマー、モーリーンを演じる上木彩矢さんにその意気込みを聞いてきました。

上木彩矢 RENT

『このメンバーだから、一途にがんばれる』

ー上木さんにとって初舞台となるミュージカル『RENT』。世界中で愛されている作品に出演されるということで、不安やプレッシャーを感じることはありませんでしたか。

「ありましたね。もう、なんていうんでしょうか。『ミュージカル?わからない!』っていう部分が素直にあったので、とにかくニューヨークに観に行ったんですよ。『RENT』オフ・ブロードウェイに。もちろん、観て感じたものもたくさんありましたけど。2~3日ニューヨークに行ったからって何がわかるんだい?っていうくらい(この作品は)奥の深いものだと思うし、特にRENTはそうだと思うんで。でも、お稽古に入って、アンディ(日本版リステージ:アンディ・セニョール Jr.)とかマーカス(振付補:マーカス・ポール・ジェームズ)とか、いろんな人たちからRENTの世界観などを聞くにつれ、どんどん深いところに入っていけるようになりました」

ーお稽古に入り、あらゆる角度からRENTの世界観を広げ、掘り下げていったという感じですね。

「そうですね。未知の世界だったので、稽古に入る前はすごく不安が大きかったんですけど、いざやってみると、仲間がみんないい人で、助け合いながらやれています。すごくいい現場ですね。私、こう見えても緊張しいで、普段の(音楽)ステージでもすごく緊張するんです。実は私、ドキドキすると革ジャンを着るクセがあって。それをみんなに見つかって『おい、またカミッキーがドキドキして革ジャン着てるぜっ!』っていじられたりして(笑)。それでふっとリラックスできたり」」

ーメンバー同士で支え合うことはもちろん、仲間がいるということの心強さもあるんでしょうね。

「それはすっごいありますね。最初は、仲間っていっても、仕事場だけの関係なんちゃうん?とか思ってたんですけど(笑)。だけどホント、RENTはそんなこと全然なくて。兄弟姉妹というか家族みたいなんです。稽古も午後1時から9時までとかやるんですけど、9時近くなってくるとみんな疲れ切って、顔が真っ白になるんですよ。そしたら、みんな『疲れた』って口にしないようにしたり、『がんばろうぜ!』って声を掛け合ったり。今はほんとうに、このメンバーと一緒だから、RENT一途にがんばれる!って思ってます」

上木彩矢 RENT

『破天荒で自己チュウなモーリーンは、わりと私と似てるかな』

ー2003年のデビューから9年。シンガーとしてのキャリアを積んでいる上木さんですが、“歌うこと”と“演じること”の違いを感じるのはどこでしょうか。

「“伝える”ということに関しては同じだと思いますけど、違いといえばやっぱり台詞ですかね。曲中に台詞があると、そのスイッチのあんばいが難しかったりします。ただ、『シンプルに感じたままやっていいよ』と言ってもらえるので、気持ち的には楽かな」

ー表現するうえで、気をつけていることは?

「う~ん、そうですね~。ミュージカルは歌をうたうだけじゃなく、フリや台詞、それらをぜんぶリンクさせて歌うので、やっぱり難しいです。今までだったらお客様を見て歌えばよかったけど、たとえばモーリーンとジョアンヌ(モーリーンの恋人)が二人で歌う『Take Me or Leave Me』は、ジョアンヌに対して歌わなきゃいけない。なのに、音楽ステージのときの癖で、ついついお客さんを見てしまったりとか。そういう課題はありますね」

ー上木さん演じるモーリーンはバイセクシャルの女性ですが、役作りで苦労されたことは?

「モーリーンは比較的破天荒で、自己チュウというか、わりと私と似てるかなと(笑)。なので、振る舞いとかには気をつけてますけど、他のメンバーに比べると、役作りの苦労は少ないかもしれないです。ジョアンヌ役の西国原礼子ちゃんとも、今では大親友で、常に一緒にいますし、『おばあちゃんになっても、たぶん私たち一緒にいるよね~』ってぐらい仲が良くて。役作りとか、性別とかに関係なく、普通にそのまま『愛してる!』って言えます。セクシャリティを問われたら、私自身はストレートになるんでしょうけど、今までも今も、それを意識したことはないですね。好きなものは好きー!って言いたい」

ーそういった上木さんの自由さもまた、モーリーンと似ている気がします。ところで、上木さんと西国原さんが揃うと、とてもにぎやかだとお聞きしましたが(笑)。

「お互いすごく性格が似てまして。うるさいんですよ(笑)。で、いつも怒られて、つまみだされる。『今シリアスなシーンをやってるから、ちょっとあっち行って!』とか。で、『はーい♪』みたいな。そんなコンビなんですよ(笑)」

text.kimiko hayakawa
photo.toshiya suzuki
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