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2017-05-26

LGBTs未来への備え~公正証書ってどんなもの?~

渋谷区の同性パートナー証明書の条例のニュースを皮切りによく見聞きするようになったのが「公正証書」という言葉。

同性パートナー証明書発行のために必要なもの…ということは聞いているけれど、いったい「公正証書」ってなに?

作った方がいいもの?どうやって作るの?などなど、LGBTフレンドリーな弁護士の先生に、公正証書について聞きました。


●公正証書っていったい何?

2015年に全国で初めて、渋谷区で同性パートナーの証明書の発行が条例として可決され話題になりました。
その証明書を発行する条件となっているのが「公正証書」。「公正証書」っていったい何ですか?

「一般的に公正証書とは、法的な取り決め(お金を貸した、借りた)や、自らの意思内容(彼女に財産を残したい等)について、「公証人」という第三者の前で公表し,その内容を書き残してもらう書面のことをいいます。

契約は口頭でも結ぶことができますが、書面にしておけばあとから言った、言わないの争いになることも少なくなり、さらに利害関係のない第三者が契約内容を書面に残しておけば、その内容の信用性は高いものになります。」

カップル間の将来の取り決めを第三者の前で公表し書面を作成するのですね。その「公正証書」はどこで作成できますか?

「専門家に相談するなどして書面を作成してから、公証役場に提出します。作成した公正証書は役場で保管もしてもらえるので、紛失・破棄の恐れも格段に減少します。公正証書は、いったん作成すれば単なる口約束ではなく、ともすれば違反した場合に損害賠償請求権が発生し得るような、’固い約束’だともいえます。」

●どうして公正証書を作るの?

先ほど公正証書は’固い約束’だとおっしゃいましたが、将来の取り決めをしておきたいカップルもいれば、自由気ままな付き合いが希望で必要ないという人もいますよね。

「そうですね。例えば、『同性カップルとして長年共同生活を送り、パートナーの収入に完全依存している中で相手が急逝した場合、その財産をもらいたい』『自分が痴呆になり日常生活の判断ができなくなったら、パートナーに病院や老人ホームを選んで連れて行ってほしい』『将来、パートナーと関係が破たんしたときには、その事情に応じて現金や持家等の財産をしっかりと振り分けたい』など、生涯をともにしたいパートナーがいて、このようなことを考えている方は公正証書を作って取り決めをすることができます。」

同性婚ができない日本では、結婚していれば当然もらえる権利が、同性カップルは得られないですよね。長年連れ添っていても、何かあった時に何の権利も得られないのは不安に感じます。

「相手に何かあった時、パートナーの家族や親族が、二人がパートナーとして生活していた事実を尊重してくれるとは限りません。公正証書を作成しておけば、これらの問題で悩むことが少なくなるのです。」

●どんなことを決めればいいの?

「法律に違反するような内容は定めてはいけませんが、それ以外は原則として作成する人が自由に取り決めることができるのが公正証書です。例えば家計の負担や、将来こどもを育てる時のことなど、ふたりの異なる希望や条件について,よく話し合って決めることが大切です。また、公正証書の種類によっては、一回作成したからといって撤回できないものではないので、状況や考え方に変化が出てきた場合は、再度作成し直すことも可能です。財産を残すには、公正証書遺言を。老後の身の回りの世話については、任意後見契約公正証書を。そして、ふたりの共同生活のルールを決め、破たんの場合に備えるには、準婚姻関係公正証書を作成することが有効です。」

●掛かる費用については?

「公正証書の作成には大きく分けてふたつのアプローチがあります。ひとつは自分で公証役場に相談しながらで作成する方法。もうひとつは弁護士や行政書士など専門家に相談依頼をして作成する方法です。

自分で作成する場合、作成費用は無料ですが、公正証書を役場で作成するための手数料は『公証人手数料令』という政令により定められています。手数料については公証役場のホームページに載っているので確認してみましょう。

一方、専門家に依頼する場合は、おふたりの用途に合わせ原案作成をするため別途費用がかかります。公正証書作成のおおまかなアドバイスのみであれば無料相談を受け付けている専門家もいますが、一般的な公正証書作成のサポートであれば5万円前後の費用は必要になると考えるといいでしょう。いずれにせよ、公証人手数料は必要となり、公正証書の内容により費用は変わってきますので、その辺りを含め、一度専門家に相談してみるのもいいかもしれません。」


専門家に相談した場合の公正証書ができるまでの流れ

1.弁護士や行政書士など専門家に相談依頼をする

2.専門家と一緒に内容を検討する(メール・電話・面談など)

3.公正証書作成の正式依頼をする(サポート内容はアドバイスだけで終わる場合や子細な原案作成まで含む場合等さまざまです)

4.専門家が公正証書原案を作成する

5.公証人と専門家が内容を吟味し、依頼者と共に訂正等を行う

7.公証役場へ出向き、依頼者と証人が内容説明を行う

8.公正証書作成完了(証書は依頼者と公正役場にて保管)

●BUT! こんなことに注意も必要!


「公正証書はその内容をある程度自由に取り決めることができる分、必要以上にお互いを縛ってしまう…という一面もあります。公正証書で取り決める内容は、パートナーシップを解消したら…、いずれどちらかが死んだら…という、現在ではなく将来いつ発生するかわからないことに備えるものです。あれもこれもとやたらに項目を設けて、お互いを縛り付けあうのは考えものです。ふたりで将来のことについてしっかりと話し合い、また、時折内容を見直しながら、オリジナルの公正証書を一緒に作ることで、より深い絆を結ぶいい機会になればと思います。」


「公正証書」について、おわかりになりましたか?おふたりの未来のために何が必要か、カップルごとの状況によっても違うと思います。じっくり話し合ってみてください。

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